・【技能実習から育成就労へ】制度移行で企業が直面する3大変化と今すぐ始めるべき労務監査

従来の「技能実習制度」を抜本的に見直し、人材確保と人材育成を明確な目的として創設された「育成就労制度」。

単に制度の名称が変わるだけでなく、受入れ企業が遵守すべき労働条件やコンプライアンス基準は大幅に厳格化されます。「これまでの技能実習と同じ感覚で運用していれば大丈夫」と考えている事業所は、制度移行の審査で就労計画が不認定になったり、配属されたスタッフが早期に他社へ流出したりする重大なリスクに直面します。

本記事では、技能実習から育成就労への移行に伴う決定的な変更点と、企業が今すぐ点検・準備しておくべき必須労務実務を解説します。

1. 技能実習から育成就労への「3大構造変化」

受入れ企業が最も注視すべき変化は、以下の3点に集約されます。

① 本人意向による「転籍(転職)」の解禁(原則1〜2年)

従来の技能実習では、原則として実習生の自己都合による転籍は認められていませんでした。

しかし育成就労では、一定の技能・日本語水準を満たし、同一の受入れ機関で一定期間(業務分野に応じて1〜2年の範囲で設定)就労した場合、本人の意向による他社への転籍が可能となります。

不当な低賃金や劣悪な労務環境を放置している企業からは、要件を満たした瞬間に外国人材が一斉に流出し、採用・初期育成コストだけが持ち出しになる事態が現実味を帯びています。

② 「日本人と同等以上の報酬要件」の審査厳格化

育成就労では、受入れ機関が支払う報酬基準について、「同一の業務に従事する日本人労働者と同等以上であること」の立証がこれまで以上に厳しく求められます。

単に地域別最低賃金をクリアしているだけでは不十分であり、事業所内の賃金規程、職務等級、評価制度との連動性が客観的に証明できなければ、就労計画の認定が通りません。

③ 監理支援機関および受入れ機関の「適格性・優良基準」の厳格化

現行の監理団体は「監理支援機関」へと改編され、外部監査の導入や中立性の確保が義務付けられます。受入れ企業側も、過去の労働関係法令違反や行方不明者の発生有無などに基づき厳格なスクリーニングが行われ、コンプライアンス体制が不十分な企業は外国人材の受入れが認められない仕組みへとシフトします。

2. 移行申請で審査落ちする企業の典型的な不備

育成就労への移行手続きを進める際、入国管理局や審査機関のチェックで不認定になりやすい代表的な落とし穴です。

客観的記録に基づかない勤怠管理

  • タイムカードやPCログイン履歴と賃金台帳の記録不一致
  • 手書きの出勤簿や、自己申告のみによる労働時間管理
  • 日々の実労働時間に対する違法な端数切り捨て処理(日ごとに15分・30分単位で切り捨てる等)

各種労使協定の未整備・無効

  • 36協定の限度時間を超える違法な時間外・休日労働
  • 労基法第24条協定(賃金控除協定)が存在しない状態での宿舎費・食費・光熱費の給与天引き
  • 適切な選出手続きを経ていない労働者代表による労使協定の締結

「日本人同等」を説明できない形骸化した賃金体系

  • 規程上は昇給や手当が定められているのに、外国人材にだけ一律に適用を除外しているケース
  • 外国人材向けの評価基準やキャリアパスが明文化されていないケース

3. スムーズな移行のために企業が「今すぐ」着手すべき実務

制度移行が迫ってから帳簿を整えようとしても、過去の給与データや打刻記録を遡って適法化することはできません。今から以下のステップで土台を整える必要があります。

ステップ1:過去1年分の勤怠・賃金台帳のセルフスクリーニング

まずは直近の賃金台帳を取り出し、「日々の時間計算に違法な切り捨てがないか」「深夜・休日割増の算定基礎(除外手当の範囲等)が適法か」「24協定に基づかない不当な天引きがないか」を客観的に総点検します。

ステップ2:外国人材を組み込んだ「就業規則・賃金規程」の改定

育成就労の評価基準やキャリアアップの流れを既存の就業規則・賃金規程に統合します。資格取得(日本語能力試験や職種別技能試験)に応じた昇給テーブルをあらかじめ可視化しておくことで、「他社へ転籍するより、この会社で働き続けた方が将来性がある」と納得してもらえる環境を整えます。

ステップ3:適正な労使協定の再締結と管理体制の周知

パート・アルバイト・外国人スタッフを含めた民主的なプロセスで労働者代表を選出し、36協定や24協定を最新の法令に沿って再締結・保管します。また、外国人スタッフ向けに母国語またはやさしい日本語を併記した労働条件通知書や雇用契約書を再整備します。

まとめ:制度移行は「選ばれる企業」になるためのチャンス

育成就労制度への移行は、受入れ企業にとってコンプライアンスの要求水準が一段と高まる厳しい転換点です。

しかし見方を変えれば、「適法でクリーンな労務管理」と「明確なキャリアステップ」をいち早く整えた企業には、国内外から優秀な外国人材が集まり、優良受入れ機関としての認定や受入れ枠の優遇措置を最大限に活かせる大きなチャンスでもあります。

当事務所では、育成就労制度へのスムーズな移行を目指す事業者様に向けて、「現行帳簿の事前労務監査(模擬スクリーニング)」および「転籍を防ぐ外国人向け賃金規程・就業規則の改定」を全国オンライン対応にてサポートしております。

「自社の勤怠・給与計算ルールが新基準の移行審査をクリアできるか確認したい」「転籍リスクを防ぐ賃金制度を作りたい」というご担当者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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